ヨコズキゲーム’

ゲームの事しか書いてない らじてんのブログ。

「デウスエクス」

 風邪でなかなか書く時間は取れなかったが、その割に、いつの間にか二周クリアし、実績全解除してしまっていた「デウスエクス」の感想。
 今回もまた、冗長な感想なので、読んでくれる人には先に感謝を。ありがとう。



 ■俺、サイバーパンク大好物!
 まず、最初に書いておきたいのは、デウスエクス前にプレイしていた「インファマス2」の感想で「超能力モノが大好き」というような事を書いたが、その超能力モノと同じくらい、自分はサイバーパンクモノが好きだと言うこと。
 「攻殻機動隊」「ブレードランナー」は勿論、「ニューロマンサー」「スノウクラッシュ」「銃夢」「マルドゥックシリーズ」・・・。そうしたサイバーパンク好きが、この感想を書いている、という前提を一つ、宜しくお願いしたい。


 ■重く、濃い、ゲーム。
 舞台は、近未来。
 人体拡張技術=オーグメント技術が登場し、問題をはらみつつも、徐々に世の中に浸透し始めている時代。
 オーグメントの大企業サリフ・インダストリーで、警備主任を務める主人公、アダム・ジェンセンは、サリフ本社襲撃事件で、大怪我を負い、生き残るためには全身をオーグメント化することを余儀なくされる。
 身体をオーグメント化された人間=オーグとなって復帰したアダムは、本社を襲撃した敵の正体と目的を探り始める・・・。

 このゲームは、PCベースで発売された同名作品「Deus Ex*1」が元になっている。
 FPSとRPGの融合という、先進性のあるゲームシステムで、高評価を博したらしいこの作品だが、続編で大コケ。二作にして、ほとんど消滅状態にあったのだが、この度、一から作り直される形で、新生した。
 タイトル、テーマ、基幹のゲームデザインは、ほぼ同じだが、主人公や物語などに直接的な繋がりは薄く、完全に別の作品として楽しめるように作られた、とのことらしい。実際、ゲームをプレイすると、前作までを知らなくても、全く問題はない*2

 とにかく、全部の要素が重く、濃い、どっさりとしたゲームである。
 決して、手軽だったり、爽快だったりするゲームではない。そうしたゲームをプレイしたいと感じる人には真っ向不向きなゲームである。そういう人は、回れ右して別のゲームを選んだ方が良い。

 例えば、世界観はバリバリのハードSFである。
 サイボーグ技術の発展は、人体の欠損を含む、障害の克服に役立つ一方、拒絶反応を抑制する薬物による中毒症状を引き起こしたり、あるいは、軍事利用の危険を孕んでいる。
 そうした状況は、ゲーム中の随所でプレイヤーの目の前に、出来事として現れ、アダム=プレイヤーは事あるごとに問いかけられる。身体を機械化し、オーグとなった人間は果たして、まだ人間と呼べるのか。機械による進化は人間に必要なのか。進んだ科学を人間が使い切ることは正しいのか。
 そうした問いかけは、時に選択としてプレイヤーの手に委ねられ、プレイヤーは自身の選択による結果を目にすることになる。倫理的に正しいとされる選択の結果は、人の命を守ることになるとは限らず、そういう意味でも考えさせられるようなイベントが多く盛り込まれている。
 投げかけるテーマが普遍的であるため、SFとは言っても、無闇にトンデモな世界ではなく、地に足が着いた内容となっている。サイボーグ技術などの発達以外は、現実の延長を強く感じる世界観で、オーグ問題以外にも、企業間の争い、政治的駆け引き、オーグによる格差と暴動など、現実的な展開が多く発生する。
 情報についても、凄まじい密度である。
 マップの面積、テキスト量こそ、「Fallout3」などのゲームと比較すると少ない感はあるものの、複数ルートを持ち、縦に絡んだ複雑なマップ、重層的に錯綜した情報の産み出す密度は、決して引けを取るものではない。

 こうした、重厚な作品を求める人にはうってつけの内容となっている。


 ■普通の人間がヒーローになるゲーム。
 重大な注意点がある。
 パッケージには、マトリックスのネオや、メタルギアのスネーク、あとついでに、野球選手のイチローなんかを彷彿とさせる、渋い男。
 プレイヤーの分身でもあり、同時にこのハードSF世界での化身でもあるアダム・ジェンセンさんは、やたら格好良い見た目からヒーロー的な活躍を想像してしまいそうになる。
 だがそれは、「まったくの見当違い」である。
 ヒーローばりの大活躍を最初から期待すると、ものすごい肩透かしを食らうこと請け合いなので、気を付けて欲しい。
 
 
 やたらに渋いヒーロー然とした雰囲気だが勘違いしてはいけない。

 アダムさんは「ほぼ普通のおっさん」である。
 確かに、元SWAT隊員で現大企業の警備主任ではある。だが、本作はトンデモSFではなく、可能な限り現実の延長=想定される未来を前提に世界観を構築している。
 そのため、アダムさんの身体能力も、通常の人間レベルでしかない。銃撃をまともに食らえば、4、5発で死ぬ。高所から飛び降りれば(多分サイボーグ化された重さ故と思うことにした)ダメージ→場合によっては即死する。体力も普通で全力疾走すればすぐに息切れする。アクションゲームのキャラにありがちな無限の体力などない。
 サイボーグ化されオーグになっても、便利能力が満載という訳ではない。全くない。
 激しい運動=近接格闘をすれば電力消費から一定時間は近接格闘は不能になるし、色々微妙な有り様である。オーグ化直後は、調整不足からレーダーすらまともに使えないのだ。いや、すぐイベントで使えるようになるけど。
 勿論、某伝説の傭兵のように、サイボーグと渡り合う格闘スキルもないし、ミサイルにも飛び乗れたりする訳がない。
 プレイ開始時のアダムさんは、パッケージ詐欺と言いたくなるほど「ちょっとすごめの一般人」でしかないのだ。

 そんな「ほぼ普通のおっさん」アダムさんが如何に活躍するのか。
 このゲームでは、攻略中の行動によって経験値が加算され、それが一定値貯まるとプラクシスポイントというポイントが加算され、それによって、アダムさんの持つサイボーグ能力が「拡張されていく」。
 細かい話になるがこの「拡張されていく」というのがポイントで、決して「追加」ではないのが、ミソ。実のところ、アダムさんの全身には、最初から全ての能力が搭載されている。しかし、オーグ能力をいきなり全開放しても、脳がそれを受け付けるかどうかは別問題だったりする。脳がオーグ能力に適応して使えるようになった、という事を、このプラグシスポイントによる成長要素で表現している訳だ。だから、適応出来る状態になった=ポイントが貯まったとなれば、いつでも新しい能力を開放出来る。些細なことだが、世界観を壊さない工夫が光っている。

 そうして、オーグとして適応し、能力を開放して行くことで「普通のおっさん」だったアダムさんは「世界を救うことが出来る最強のオーグ」へと相応しい変化遂げていく。
 壁を透過視し、遠距離から敵を補足し、ステルスで敵を欺瞞し、壁をぶち抜き、クソ重い物を持ち上げ、電撃・有毒ガスを無効化し、ハッカーの帝王となっていく訳だ。

 このゲームは決して、ヒーロー大活躍ゲームではない。しかし、RPG的な成長要素によってプロ意識の高い普通の人が、サイボーグとなり、そして最終的に世界を救う最強の男となっていく様を体験出来るゲームになっている訳だ。


 ■特徴的で素晴らしいグラフィック
 このゲームの白眉は、特徴的なグラフィックだろう。
 人物、背景共に、最先端の高精細なグラフィックか、というと、全然そんな事はない。近距離では割と荒いし、アダムさん以外のキャラは、デザイン造形はともかく、顔の作りが結構雑かったりする。
 しかし、このゲームは、そうしたグラフィックレベルを気にさせないほどの凝った意匠に溢れている。

 オレンジ基調の光る溢れる演出など、あまり他の海外ゲームでは見ない洗練された雰囲気のあるデザインが随所に光っており、攻殻機動隊の匂いがする造形と、強烈な密度がグラフィックレベルの荒さを気にさせない。
 特に、中国マップ=ヘンシャのマップは強烈で、空気感も含めて、生活の匂いすら感じる。ゲームをプレイしていて、自分が香港に行った際に嗅いだ、生臭い路地の匂いを思い出すとは思わなかった。
 そんな小汚い下層部から上層部に抜けると一転、消毒されたかのような清潔感ある景色が広がる。堂々たる格差が都市空間の造形に現れている様は、圧巻だ。
 商店の店先を覗けば、やたらにスタイリッシュな商品が並んでいたり、下水道には自転車が捨てられていたり・・・・生活感のある風景、そこにある世界を現出させるべく、心血が注がれたであろうマップデザインは秀逸だ。
 こうした点は本作の大きな魅力になっている。

 
 ■歯応えのあるステルスFPS。
 ゲームの骨格は、オーソドックスなFPSをベースに成り立っている。
 遮蔽物に隠れた時=カバー時と、イベント中のみ、三人称視点で描かれるが、基本は、主観モードによる、FPS的なゲーム性であり、敵キャラのAIや、移動などの挙動を含めて、一昔前のPCゲームなどの手触りを感じる、実に硬派な作りになっている。
 先述の通り、ゲーム開始時は凡人能力のアダムさん。サイボーグ化されたとは言え、銃撃数発で軽く死ねる程度の防御力しかなく、最高難度では出会い頭のショットガン直撃で一撃即死出来るほど。
 そのため、ガチンコ真っ向勝負で突撃プレイは全くオススメ出来ず、バランスはステルス寄りになっている。

 カバー時には三人称視点になり、自分がどのように隠れているか見ることが出来、レーダーもあるものの、基本一人称視点で、レーダーには構造物の形状までは表示されない。サイボーグ技術は高度に発達していても、メタルギアソリトンレーダーみたいな便利な代物はこの世界には存在しないらしい。その上、このゲームの敵は滅法視力が良い。
 そのため、ステルスゲームとしても難易度は高い。
 慣れないうちは敵の巡回ルート把握だけでも相当時間がかかるだろうし、把握したと思っても今度は倒す隙を見つけるのに苦労したりする。
 基本的なプレイとしては、敵を一人一人倒し、倒した敵を移動させて他の敵から見つからないにして、次に取りかかる・・・というステルスゲームのお約束みたいなプレイをするのだが、敵の動きをよく見て、しっかりと把握してから動き出さないと、あっという間に発見されて昇天することになる。

 能力を拡張していくと、次第にこの難易度は緩和される・・・と思いきや、多少安全になるものの、より凶悪な敵配置になっていくため、一概に難度が下がるとは言い難い。
 ただ、レーダーを範囲を広げて敵をあらかじめ確認し、壁を透過して動きを観察し、隠し通路を見つけて危険を回避する、と言った行動はどんどん取りやすくなる。
 一度使うと電力が回復するまで特殊能力が使えなくなるのも、快適さを損なう反面、色んなスキルの拡張や、電力自体の拡張などのゲーム性に繋がっている。
 こうした、拡張能力をうまく使いこなすことが攻略のポイントとなる=搭載したシステムが空振りになっていないのは非常に良い事と思う。

 自分はステルスゲーム大好きのため、このゲームの歯応えは丁度良かった。特に一見、隙のない布陣の巡回をする敵でも、よく観察すれば、ちゃんと倒して死体(あるいは気絶体)を隠すタイミングがあったり、そのタイミングを拡張のステルス能力で増やしたり、角からわざと顔を出し、誘き寄せて巡回タイミングをずらしたり、各個撃破したり、と、考えるのが非常に楽しかった。ただ、ステルスゲームに慣れていない人は、主観視点と相俟って、相当キツいのではないだろうか*3

 ただ、純粋にステルスゲームとしてどうか、と言われると、カバー時の操作が少しまどろっこしい、エルード(ぶら下がり)がない、など少し快適さに欠けるところもあり、スプリンターセル:コンビクションなどと比較すると、少し古くさいのは否めない*4
 一人称+三人称のカメラチェンジなどはかなりスムーズで、程よく馴染んでいるものの、操作の面で、もっと洗練されていれば・・・と思わないでもない。


 ■うたい文句にほぼ相違ない自由度の高い攻略。
 このゲームは「コンバット・ステルス・ハッキング・ソーシャルの四つを軸に攻略可能」とうたっている。
 実際、一つのマップにおいて、かなり柔軟で多岐に渡る攻略ルートが用意されている。会話=ソーシャルの交渉によって正面から入れたり、ハッキングで裏口から侵入したり、ダクトから入り込んだり、重量制限のあるオブジェクトを動かして侵入したり、と、ほとんどのマップで複数の攻略ルートが存在する。
 新しいマップに着く度に、自分のプレイスタイルや拡張した能力、アップグレードしている武器の種類、などと相談しながら、どのルートで先に進むか考えるたり、探し出したりするのは非常に楽しい。
 こうした攻略が可能なマップ設計はかなり難しいと思うが、それをきちんと実現している点は大きな魅力になっている。
 
 マップの攻略ルートだけでなく、イベントの各所でも、複数の展開が可能なように設計されている。
 メインミッション=物語は一本道で、サイドミッションも基本はお使い系の内容だ。
 しかし、各ポイントでの自由度は高く、行動内容によって、細かな分岐が存在するようになっている。サイドミッション自体の状況作りも丁寧で、興味深い内容が多く、また攻略に頭をひねる場面も発生するため、お使いが苦痛である、ということはない。
 二つの異なる主張のどちらに組みするのか、相手を生かすのか殺すのか、自分の益を取るのか公共の倫理を取るのか、仲間を守るのか犠牲にするのか・・・プレイヤーはそうした選択を各所で迫られることになる。
 こうした細かな分岐によって、リプレイ性が高められており、マップ攻略と含めて、数周楽しむことが出来るようになっている。


 ■とにかく密度重視の語り口。
 ハードSFであり、正統派のサイバーパンクであり、人間性と進化とは何か、を突きつける本作は、物語の語り口も非常に密度が濃い。

 海外の作品は、説明をしないというか、嫌うというか、とにかく、平気でプレイヤーの知らない単語を、説明無しに使うところがある。
 後々までプレイすると「ああ、なるほどアレはそういう事か」と解るのだが、一瞬混乱するのは日常茶飯事だったりする。
 このゲームも例外ではなく、物語のバックボーンとして常識である単語は大抵いきなり普通に出てくる。が、注意深くデウスエクスの世界に触れていると、このゲームの場合、それが実にさりげなく、しかし、ちゃんと説明されている事に気付く。
 付けっぱなしのテレビから流れるエリザのニュース、ラジオから流れるDJのコメント、街の人たちの立ち話、ハッキングしたPCで読める何気ないメール、さらにはローディング時のTIPS。至る所にデウスエクスの世界を知ることが出来る情報が溢れており、それらは全て、物語の展開できちんと意味が出て来たりする。

 自分の場合、最初はその場その場の目的・展開や、単純な情報量に圧倒され気味だったのだが、二周目をプレイした時に、その錯綜する密度の濃さに驚いた。
 終盤舞台になる場所については、かなり序盤から事あるごとに言及されていたりするし、何よりオープニングで出て来た面々があの場所で出てくる伏線になっているとか・・・・逆に気付かなかった自分がマヌケになった気分にもなったりしたくらいだ。


 ■豪華過ぎる声優と、素晴らしいローカライズ
 密度の濃いお話に華を添えているのが、やたらに豪華な声優陣だ。
 特に、おっさん連中。アダムの雇い主サリフに池田秀一シャア・アズナブル)、敏腕政治家タガートに清元幻夢(冬月先生)、オーグメンテーションの創始者に小林清志次元大介)とベテラン揃いである。
 どいつともソーシャルバトル=論戦をする事になるため、その印象も強烈だ。
 この点を含めて、ローカライズは非常にレベルが高く、全編通して違和感のあった場所は数カ所。テキスト量が非常に多いゲームだけに、これは素直にすごいレベルである。モダンウォーフェア2で思いっきりミスったスクエニだったが、本気になったらやるんですね、と思った。この調子で今後も本気になり続けてください。まずはバットマンアーカムシティをお願いします。


 ■名作への堂々としたオマージュ。
 少し細かい話になるが、名作へのオマージュも目立つ。
 そもそも、このゲーム自体、PC版「Deus Ex」へのオマージュみたいなものでもあるが、何よりメタルギアへのオマージュは堂々・・・というかなんというか。とにかく強烈。
 主人公アダムの見た目からして、影響無しな訳がないが、特に終盤の一幕はそのまんまであり、正直笑ってしまった。

 そもそも、海外の開発者は影響を微塵も隠さないところがある。「俺はあのゲームのあの部分が最高にイカしてると思ったんだ!」と思ったら素直にそう言って、素直にそれを取り込む*5。オリジナリティ偏重気味で常にパクりパクられ恐怖症的な日本の開発とは結構な差である。
 そういう感じなので、多分、どこかのインタビューでは言及もしてるだろうとは思うが、まぁここまでド直球で派手なオマージュはなかなか見たことがないので、メタルギアファンは、この部分で爆笑するためだけに、このゲームをやって良いかも知れない。
 勿論、パクリとか思うような偏狭な人はやんなくて良い。


 ■敵だけ設定が弱い。工夫もイマイチ。
 美点の多いデウスエクスだが、欠点も少なからず抱えている。

 先述の通り「カバー時の操作回りが硬い」という点。

 ローディングも少々長い。
 セーブデータのロード時や、エリアチェンジの度にこれがある訳だが、ステルスメインで防御が紙のプレイ中や、ノーアラートプレイをしている時は、もうロードの連続になる。そうなると、ロードの長さが、継続プレイへのやる気を削ぐことは間違いない。
 また、ヘンシャの街など区画単位で往復する場合も、ローディングが煩わしい。
 オブジェクトの多さなどを考えると、シームレスにせよ、とは全く思わないのだが、せめて現状の半分なら、より快適だっただろう。

 次に、敵の設定が弱い、という点。
 オープニングから通して敵となるボスのオーグ兵士や、それを操る敵の設定がイマイチ希薄なのだ。
 別に全く説明がない訳ではない・・・・のだが、どうもユーザー=アダムさん本人を攪乱して終わってしまっているようなところがある。
 特に、このゲームの場合、世界の状況や設定についての情報が過剰なまでに作り込まれているため、ここだけ手落ちな気がして、余計に気になってしまう。ボス敵以外のアダムを取り囲む面々、プリチャード、サリフ、タガート、などのキャラがしっかりと描写されているのに比べると、ボスたちはその登場機会の少なさもあって、動機などの足元が極端に緩く見える。
 人間性や倫理のあり方、というテーマを突きつける本作の中で、否応無しに戦闘と殺害を強制させる場面なだけに、わざとゲーム的に仕上げたのかも知れないが、個人的にバランスが悪いと感じた。
 また、そのボス戦自体が単調なのも残念な点。
 一応それぞれ「らしい」攻撃を繰り出して来るのだが、その「らしい」攻撃一本調子で、攻略そのものも含めて、ここだけ単調に感じる。
 ボス戦の回数が少ないこともあり、もっと攻撃方法が変化して来たり、何度か戦う機会があったりして、白熱したバトルを体験したかったと思うし、バックボーンをしっかりさせて「敵」を「闘い甲斐のある敵」たらしめるような演出が欲しかったところだ。

 そういえば、敵を深く描く、という事について、海外ゲームは全体に弱い気がする*6。アメコミはその辺り結構うまいのになぁ。


 ■拡張の地味さ。敵の地味さ。そして、ロボもったいない。
 オーグメントを拡張して、どんどん人間離れしていける訳だが、正直、地味な能力が多いのは否めない。
 「ただ着地するだけ」のイカルスランディングが電撃バリバリでやたら格好良かったり、全方位攻撃=トルネードのような派手な攻撃もあるが、かなり拡張しても、地味な印象は拭えないままである。
 というのも、拡張して使える能力が基本的に「別のゲームでは普通に使える能力」ばかりなのが問題なのだと思う。
 「普通のおっさん」が「世界を救うことが出来る最強のオーグ」になっていくゲームだ、と自分でも説明したが、どうせなら「もっとすごい能力を使う最強のオーグになりたかった」と思ってしまう。
 「遠隔ハッキング」「広範囲で敵の視界一時的に欺瞞するジャミング能力」「無人探索機を飛ばせる」「腕の中に銃を仕込む」「脳内デバイス付きの敵を操る」みたいな如何にもすごい能力があれば、サイボーグの超人プレイが楽しくなったと思う。

 勿論、サイボーグ能力を拡張したなら敵もパワーアップさせるべきだ。
 というか、拡張の地味さは、敵の地味さにも繋がっている気がしてならない。

 このゲームの敵は、ボスを除けば、基本普通の兵士である。オーグも多数登場するが、普通の兵士となんら変わらない行動しか取らない。
 「壁を透過するX線の視界を所持」「トンデモな脚力で突然高所に移動する驚異の哨戒範囲」「ステルスで潜む恐怖の兵士」など、他のゲームでは登場してくる訳で、せっかく同じような事が可能な設定になっているのだから、そういう敵は欲しかったように思う。

 さらに、勿体なさすぎるのがロボの存在である。
 ロボ、というより、攻殻機動隊に出て来た、思考戦車みたいなものだが、これがもう完全に空気である。
 確かに、格納庫、ヘリ強襲時など、戦う場面もあるが、どいつもEMPグレネードで完黙。暴動後のデトロイドでの派手な哨戒行動は印象的だが・・・。
 他の警備ロボは、ハッキングするか警戒状態にならない限り、セキュリティーシャッターの向こうから出てこないので問題外。

 せっかく登場しているのだから、ボス戦として一度ぐらいはガチンコで戦ってみたかったものである。

 「プリチャード!なんなんだこいつは!」「まずいな・・・タイヨンの最新式戦車だ。既に実戦配備されてるとはな・・・」「感心してる場合か。対策はないのか?」「そいつの装甲は対電磁仕様だ。EMPグレネードは効かないぞ。・・・・ただ、そいつはその特性上、有人でしか動かないんだ。つまり・・・」「衝撃には弱い」「その通りだ。ジェンセン、強い衝撃を与えるんだ」「了解、やってみる」

 みたいな会話、めっちゃ聞きたかったぞ。
 そんで誘導してワイヤー切ってコンテナ落とすとか、フラググレネード連発するとかして動き止めて、上に乗ってハッチを破壊して、中の人倒すの。素子みたいに。ああ、やってみたい。


 ■マルチストーリーではない、ということ。
 別にこのゲームはマルチストーリーを標榜してはいない。
 ただ、せっかくリプレイ性を高める設計にしているのだから、これをやればあれは出来ない、という要素をもう少し盛り込んで欲しかったな、思うのだ。
 ほぼ一本道のメインはさておき、やろうと思えば全てのサイドミッションが一周で出来てしまう。そのため、二周目は、メイン、サイドのミッションにおけるちょっとした分岐を楽しむに留まってしまう。
 それはそれで楽しいのだが、どうもダイナミズムに欠けるのは確かである。全編通して、割と大きい分岐というと、男女のマリクが死ぬかどうかくらいなんじゃないだろうか。

 地味な分岐が大半を占めるため、正直、違う攻略ルートであろうと、一周目と同じマップをプレイするばかりでは、少々窮屈な感もあった。特に攻略のキツいパイカスとか。

 二つのマップのうち、一つだけ選べるミッションや、一つのサイドミッションをすると、その周では、もう一つは出来ない、というような仕組みがあれば、二周目プレイの意欲も、一層高まったと思うし、より大きな自由度を味わうことが出来たような気もする。まぁ単純に物量は増えるので、贅沢な話でもあるんだが。


 ■続編が非常に作りにくいゲーム性。
 これは正直、欠点というか、面白かったからこそ、続編がやりたい!と思うし、思うからこそ、懸念に思う点である。

 このゲームは自由な拡張と、自由度の高い攻略が売りになっている。
 が、この売りの部分が、続編を制作する際に、足を引っ張るような気がしてならないのである。
 というのも、続編が出るとすれば、拡張部分もパワーアップするのが当然の成り行きである。欠点の部分で指摘もしたが、ここはどう考えてもパワーアップ必須となるだろう。

 ただ、指摘したものの、そうなると、拡張システムを見直す必要が必ず出てくる。
 今作のまま、自由に拡張出来過ぎると、最初から各種拡張に対応した仕掛けがマップ側にも必要になってくる。これは、場合によっては、後半においてのマンネリや、あるいはゲームバランスが簡単に破綻する可能性がある。
 じゃあ、ってんで、拡張に枷を付けると、これはこれで、やりようによっては自由度が結局なくなってしまい、ユーザーの反発を招き兼ねない。ベストなバランスはあると思うが、調整が非常に難しくなるのは間違いない。

 伸び白があるのは確かだ。
 エンディングからしても、是非続編をプレイしてみたいゲームだ。
 しかし、本作は多少地味ながら、堅実にまとまっているゲームである。逆に、まとまり良すぎて、このまとまりを維持したままパワーアップさせるとなると、かなり大変だろうなぁ・・・・と思ってしまうのだ。


 ■鋼の意志を感じる、最高のサイバーパンクゲーム。
 ゲームには時に単純にプレイして楽しいと思うだけでなく、何かを投げかけてくるような、そんなメッセージを持ったものが現れる。

 緻密な世界観。張り巡らされた伏線。問いかけるテーマと投げかけられる選択肢。
 元の作品に対する敬意も含めて、グラフィック、ゲームプレイ、物語、その全てに、サイバーパンク中のサイバーパンクを作ろうとする、開発者の強い意志を感じる。
 ゲーム性の部分に古臭い部分があり、ステルス中心のゲーム、かつそこそこの難度から、快適・爽快なゲームでもない。出てくる用語、複雑に絡んだ情報、語られる内容からしても、全然ライトに楽しむ作品ではない。
 その分、鋼の意志によって形作られた本作は、記憶に残る強い印象を放っている。

 本作が今年度最高の作品か?というと難しいところはある。
 しかし、少なくともサイバーパンク好きの人は、是非この贅沢なゲームをプレイしてみて欲しい。
 王道サイバーパンクの中、普通の人が、世界を救う男になる、それを体験出来るのだから。

*1: サイバーパンク大好きを標榜しているくらいなので、自分も当時、めちゃくちゃプレイしたかったが、なんとなくタイミングを逃し、プレイしなかったまま

*2: 一部のおまけ的な要素で旧作ファンがニヤニヤすることが出来るようだが、多分そんなに重視する必要はない・・・と思う。気にはなるけど

*3: 特に、苦手な人にとって、ノーアラートでプレイするのはかなり難しいと思われる

*4: 比較対象がとんでもなく洗練されていて相手が悪い、という感もある

*5: こういった気質故か、取り込んでそれを昇華するのが年々うまくなっている。大きな目で見れば影響を受けて急いで付け足しました、みたいなゲームもあるんだが、大抵は見事に取り込み切って、ベクトルによってはオリジナルを凌いでいることも多い。韓国MMOとかは知りません。すいません

*6: 思うに、倒すべき相手を躊躇なく倒せるようにする、感情移入する先を明確にする、という事に重きを置き過ぎてしまう「癖」があるのではないだろうか