未だ脳内は「バイオショックインフィニット」に占拠されたまま。俺です。
前回の感想では、完全に主観のみで書き散らしたので、今回は少し離れた視点で、バイオショックインフィニットのことを書いてみる。
ちなみに今回は、核心に触れないまでも、多量のネタバレを含むので、やべえと思った方は回避推奨で。
あと、クリアして終盤訳わかんなかったぜ!という人は、以下のブログの解説が抜群にまとまっているので、推奨。
■その前に補足
さて、引いた話を書く前に、前回書いた記事でもう少し強調しておきたかった事などを。
自分がインフィニットを評価している最大のポイントは物語ではない。
いや、物語もすごいとだけれど、その物語を通して、出来た「体験」を評価している。
確かに本作はブッカーさんの視点を通した物語であるため、決してプレイヤー自身の物語では無いわけだが、主観視点による終盤の体験は自分にとって「かつて小説で読んだ並列世界」(イーガン、円城塔を思い出した)を体験し、物語による状況と相まってその壮絶さにぶち抜かれてこその評価なのだ。
ぶっちゃけ、並列世界、タイムリープ物というだけなら、他にもたくさん素晴らしい作品があるわけで、それだけじゃ今更ここまで心揺さぶられなかったと思う。
いや「ファースト・パーソン・ストーリーテリング」とはよく言ったものだ。
主観(ファースト)だけじゃない、物語(ストーリー)だけじゃない、両方あっての体験が、俺をぶん殴った訳だ。
■圧倒的体験の圧倒的説明不足
さて、こっからは引いた話。
前回の記事で、大傑作!とぶち上げたものの、正直、余裕で賛美両論なゲームだと思っている。
最大の理由は、前回でも書いたが圧倒的な「説明不足」が目立つからだ。
量子力学における「不確定性原理」「量子の重ね合わせ」「コペンハーゲン解釈」「エヴェレット解釈」などの単語を知らなくても、ゲーム中の現象をある程度ぼんやりと捉える事は可能だろう。
しかし、それには物語を前に進める為には余分な要素である「ボイスフォン」の収集が必須になってしまう。
でもって、ボイスフォンを収集したところで、情報内容は断片的かつ時系列が錯綜しており、一度の再生では把握が困難となっている。
いくつかの重要な(特にルーテス(女)の)ボイスフォンを取り損ねると、理解が飛躍的に困難になるのは、容易に想像できる。
自分は初代バイオショックのプレイを通して、世界観をより把握し、体験するためのレコーダー収集が重要だと感じたし、今作でもそれは同じだと最初から決めてかかっていたので、エリザベスが何か言おうが、イベント内容的にはすぐにも次の目的地に向かわなければならなかろうが、ボイスフォンを集め、看板を読み、あたりを歩きに歩き回った。
さらに、終盤近く、エリザベスと一旦離れた段階あたりで、情報を整理するために入手済みの全ボイスフォンのテキストを読み込んだりした。
SF小説好きである事と、ボイスフォンの情報を熟読する作業がむしろ楽しい、という人間だったから全く問題なかったものの、重要なボイスフォンのいくつかが抜け落ちると、終盤の置いてけぼり感は半端ではなかったろうし、心に刺さり、他人の評なぞ知るかと、大絶賛するには至らなかっただろう。
「俺はわかったからいいけど」と、優越こいて話を終わりにする訳には行かない。こんなにおもしろいものを作っておいて「そのおもしろさがわからない可能性が出てくるように作るなんてなんて事すんだ!!」という思いがもやもやとあるから。うん、えらい無茶苦茶言ってるな。
ちなみに、最初のプレイクリア時で、9割方理解出来ていたものの、上記リンクの解説記事にて、タイムライン画像を見るまでは、割と切ない系の「エターナルサンシャイン」的なエンディングと思っていた(前回記事に対するはてブロのコメント時は、まだ画像を見てなかったので「白昼夢」と書いた)。
個人的にはどっちでも好きだから全然OKだったが。でもまぁ、確かに、理屈は通ってるし、ご都合主義と感じないなら、ハッピーエンドが良い!!
■オートセーブ問題
他にも手放しで称賛出来ない理由はある。
言わずもがな、オートセーブ問題。
なんせオートセーブ以外のデータ保存方法がない。
「戦闘も終わったし、今日はここでやめよう」と思って、終了を選ぼうとすると「最後のセーブは○時○分です。終了していいですか?」みたいなテキストが表示される。いや、それ20分前だから。いいわけないだろ。
もし、物語的にキリのいいところまで進めてやめて欲しいと思っているのなら、どう考えても開発のエゴ。自分は、PC版を開発後、家庭用移植の際にサボったんだと勝手に想像しているが、いやなんとかしなさいよ。
ぶっ通しでプレイした自分みたいな人間はともかく唐突に「今日はもう眠い」という時にこの仕様は酷過ぎる。
■ラストバトルがもう一段欲しかった
更に、ラストの大物量戦。
最後の大盛り上がりが「特殊攻撃+大量の雑魚から防衛戦」かー、というのは初代をプレイしているだけに少し残念ではある。お話的には盛り上がったけど、どうせなら、更に畳み掛けが欲しかった。
<妄想>
現れる巨大カムストック像が雑魚を踏み潰しつつ甲板に着地。カムストックの演説をランダムにぶっ壊れ再生しながら(勿論、ここで、演説をよく聞くと、これまでカムストックが言ってなかったようなメッセージも混じっていて、それが終盤展開のヒントになってる)、ソングバードをぶち殴り迫る。最後の一騎打ち!!みたいな。
スカイフックで船体の外周を逃げ回りながら戦うブッカー。やっとこさで、巨大カムストック像を破壊するも、船がもうボロッボロで今にも堕ちそうになりつつ、ソングバードがググッと無理して起き上がる。半ば冷徹にも思える声音で笛を吹くようにブッカーに促すエリザベス、みたいな。
<妄想終わり>
初代の美点の一つ「海外ゲームなのにラスボスらしいラスボスが登場する!」というのが、自分にとっては結構大きい。
初代とインフィニットの目立った違いはいくつかあるが、大抵変わってしまった分別の魅力が加味されていると感じる。
初代→インフィニット
・陰鬱な雰囲気→平和的な光景に見え隠れする歪み
・サイコホラー要素→歴史・社会情勢に運命で見える人間の業
・戦略的な戦闘→爽快感・スピード感ある戦闘
別にどちらも別ベクトルの良さとして、個人的には満足出来たのだが、ラスボスらしいラスボスの代わりが大量の雑魚戦では、うん、やっぱり物足りなさは感じてしまった。
■いや、しかし確かな魅力もあるゲーム
とまぁ、賛否両論な本作ではあるが、前回の記事の結論とは変わらず、多世界SF好きにはマストバイな作品だと思うし、やるならボイス収集をなるべくしながら、じっくり腰を据えてプレイしてもらいたい、という気持ちに変わりはない。
SFな物語、それを体験できるという事以外にも、本作にはたくさんの魅力がある。
先の記事で書いたように、戦闘の傾向など、初代とは変わってしまったが、別の物として考えれば、これはこれで普通に楽しい。少なくとも、純粋なシューティング部分だけで言えば、俺はCoDより楽しかったデス。
更に、前回の記事で書いたように本作の世界観の密度は非常に楽しい。
1900年代初頭のアメリカ人種差別主義が煮詰ったコロンビアという国の背景には、運デッドニーの虐殺や、義和団事件があり、史実と紐づいた世界観や物語が展開される。
フィンクの作り上げた労働所は秀逸に酷くて、よくこんなおっそろしい事を思いつくなと感心する。ブラック大好きだからフィンクの放送とか全部めちゃくちゃ笑顔で聞いてたけど。特にあの労働時間で仕事を買う競売。ほんと酷い。酷秀逸。
そのフィンクに対抗して反乱を起こすフィッツロイも、立場が真逆なだけで、ひっくり返れば同じ事をする。
業の反転は、主人公ブッカーとカムストックという反転にも現れていて、業を超克した行動なんて人間そう簡単には出来ない、と感じさせられる。
そうそう日本語吹き替えも、すごく良かった。
特に序盤のモブ会話が雰囲気に大きく貢献する本作のようなゲームでは、吹き替えがありがたいありがたい。
主演両名の演技も上々、というか、ほんと沢城みゆき、すごい。何のどういう年齢のキャラやってもやりこなす演技幅すごすぎる*1
最初のシーンこそ、翻訳に??となったのだが、いざコロンビアに入るとまったく気にならなくなる。なんで最初だけあんな翻訳だったんだ?と思ったら・・・終盤付近に「アレ伏線だったのか!!」と驚愕。
良ローカライズ最高。
■DLCが楽しみ
さて、ただの噂に終わるかまだわからないながらも、DLCの噂もちらほらしてきた。
DLCでは、本編でまったく触れられなかったソングバードを是非掘り下げてほしいところ。
ブッカーとエリザベスの物語の中、重要なはずなのに、結局物語を転がすだけの存在のまま悲しい最期を迎えた彼(彼女?)が、一体どういう存在なのか、まさかこのまま放置するってわけじゃないよな!!な!!!!?
というか、3本のDLCでスポットが当たるであろう役者が、ソングバード、フィンク、フィッツロイ、といるわけで(次点でルーテス(男・女)、夫人もいるが、プレイヤーキャラには相応しくと思えない)、是非、その辺楽しみにしてる。
さて、一通り、感想も書いたし、2周目始めるか。