ヨコズキゲーム’

ゲームの事しか書いてない らじてんのブログ。

ウィッチャー原作「魔法剣士ゲラルト:エルフの血脈」感想

 まさか小説の感想をここで書くとは。俺です。

 

ウィッチャー原作小説

 上半期もっともハマり、今なお楽しいウィッチャー3の原作小説を読んだ。

 ただし、英語も、ポーランド語も読めないので、翻訳された1巻のみを。

 今更続刊はほぼ期待出来ず、続きを読みたくても読めないと言うのに。それでも読んでしまった。

エルフの血脈 (魔法剣士ゲラルト)

エルフの血脈 (魔法剣士ゲラルト)

 

  結論から言うと、驚きと困惑を交えつつ、大変面白かった。

 ウィッチャーのゲームに興味ない人は全然面白くないだろうけど。

 

これまでのあらすじでいきなり興奮する

 長編シリーズの第一巻ではあるが「エルフの血脈」には「その前」が存在する。

 前日譚として、5つの短編集が存在し「エルフの血脈」はその続きとなる為、まず本編の前に、5つの短編集のあらすじが紹介されている。あらすじで解説する必要があったくらいなら、短編種から翻訳して欲しかったのが正直なところだが。途中から始まる冒険小説のしかも途中で終わる1巻をあえて買おうという酔狂が何千人もいるだろうか。

 ゲラルトとイェネファーの出会いや、PCゲーム「ウィッチャー1」のオープニングムービーにあたるフォルテストの娘に関するエピソードなどが紹介され、いきなり気になる。

 このあらすじの中の一編が、ウィッチャー3中盤、ノヴィグラドにおいての演劇イベントの元になっている事に気付き、いきなり心が躍る。こういう繋がりを求めて読み始めたので、大変うれしい。

 

意外にすごいぞダンディリオン

 物語は、ダンディリオンの詩に、人々が絶賛するところから始まる。

 人間、非人間が入り乱れて各々の立場からダンディリオンを賛美したりあるいは質問するが、それがそれぞれの種族背景や世界情勢を物語る形となっている。いきなり情報量抜群で非常にややこしいが、ゲームのお蔭である程度下敷きが出来上がっている為、そんな場面ですら楽しい。

 ウィッチャー2・3ではいきなり捕まっていたり、余計な立ち回りで事態を危うくしてるところばかり目立っていたダンディリオンだが、本職(?)の詩で大勢から評価されているのを見て見直させられる。まぁ、直後にやっぱり捕まるけど。

 

イェネファーとトリス

 ウィッチャー世界の主要キャラ、もとい、男性陣や女魔術師たちは貞操観念が奔放で笑ってしまうのだが、ゲームプレイでプレイヤーが破廉恥な舵取りをしなくても、余裕で酷いのがよく解った。

 特に目立つのがトリスの発情っぷり。イェネファーとの友情に対する葛藤はなんだったの?と思うくらい発情した心理描写がしょっちゅう出てくる。ゲラルトに始終欲情し、むしろゲラルトが反省して遠ざけているのが面白い。まぁ、結局グダグダになるけど。ゲラルトに迫るのを抑える間にもサラッとエスケルに興奮したりして淫乱全開。

 イェネファーは、魔法に感情を左右されている可能性を気にしているのか、ゲラルトと常に反目しており、ゲラルトと直接顔を合わさず当てこする手紙や、ゲラルト派のネンネケ(何となくゲラルトと寝てそう)とまで対立する態度が面白くてしょうがない。

 あと、プレイがまともに続行出来なかったので途中でやめたウィッチャー1に登場するらしい、シャニも出てきた(ウィッチャー3有料大型DLCに登場の噂があり楽しみ)。登場直後にゲラルトさんと一発してる。当たり前みたいに手を出すよね、ゲラルト。ダンディリオンにすら飽きれられる絶倫浮気者っぷり。そりゃイェネファーも怒るわ・・・。

 

シリの立場

 ニルフガード帝国皇帝エルヒムの実子なはずだが、小説1巻においては始終、滅んだエルフの国、シントラの女王の孫娘という風に説明されている。エルヒムとの関係性については全く言及されない。多分、以降の巻でシリの境遇について更に詳しく解るのだろうが、エルヒムの実子と把握されていない時点ですら、シントラの正当な継承者であり、源流であり、ウィッチャー志願であり、てんこもりなキャラだ。1巻時点ではウィッチャー達との修行(ウィッチャー3冒頭の夢における回想と同じもの)や、その後、イェネファーと育まれる女同士の独特な関係性に焦点が置かれており、まだまだ鼻っ垂れの雰囲気があるが、1巻の中で数年は時間経過しているようだ。

 

疑心が生む悲劇、ウィッチャーの仕事

 ゾルタンは登場しない代わりに、本巻ではヤーペン・ジグリン(ウィッチャー2登場や3のグウェントカード)が登場。ゲラルトとの苦い出会いが描かれる。

 穏健で、短期的な視野からニルフガードに振り回される若いエルフ達に毒づくヤーペン。だが、そうした思いを裏切るような作戦によって、一行は窮地に陥れられ、ヤーペンは仲間たちを失う。

 

 民族対立に関するエピソードは暗いが、他のエピソードは軽妙で楽しい会話の連続が拝める。

 特に楽しかったのは、海の魔物を退治するエピソード。

 ゲラルトが言うような魔物などいないと豪語する生物学者はゲラルトに講釈を垂れる。しかし、生物学者より長く生き、フィールドワークよろしく怪物達と死闘と繰り広げてきたゲラルトの生の知識には敵うべくもない。狼狽えつつもゲラルトの名前をモンスターに名づけ新種認定しようとする生物学者に飽きれ返るゲラルト。ゲームの絵面ですぐに再生出来てしまう。

 

 他、ゲームと繋がりを感じるシーンでは、間諜時代のディクストラ(シギ)と、宮廷魔導師時代のフィリパが登場する。ディクストラは皮肉全開でダンディリオンにプレッシャーをかける。フィリパは多少小物臭いものの、早速魔術師ギルド都合の動きをしており、ブレなさを感じる。思えば、ウィッチャー3ではダンディリオンとディクストラの会話は見なかった気がする(風呂屋でブチ切れてたとこくらい)。2人がガッツリと会話してるところ見たかったな。

 

思いっきり途中!知ってたけど!!

 長編5部作が前提で執筆されたせいか、話は思いっきり途中で終わる。と言うか、戦闘はあれど、そこまで派手な訳でなく、戦争シーンも回想でちょろっとあるくらい。後半はほぼシリの修行シーンという割と地味な状況で終了。途中なのはしょうがないと思っていたが、ここまで途中とは。続きが読みたくてしょうがなくなってしまった。罠があると知りつつ罠にかかり行き、痛い痛いとうるさい人になっている自分にげんなりするけど、読みたいものは読みたいぞ。

 シリ捜索の為に差し向けられた刺客も結局捕まらず、この時点では健在の北方四王国(戦争バカ、フォルテスト王が美丈夫として持ち上げられてるけど、褒めてる女王はおばはんなんだろうか)の企みも動き始める前。大きな話の展開はまだまだこれからというところで終わるんだけど、これ5部作のどのくらいを翻訳したんだろう・・・。全5巻でウィッチャー3の内容まで行く気が到底しないんすけど!!

 軽妙な会話が連続するシーンが多く、前設定過多な点以外は非常に読みやすい。説明セリフはないのに、会話のニュアンスから状況や背景が察せられるような会話の連続が楽しい。登場キャラには皮肉屋が多いが、皮肉の方向などもキャラの立ち位置や考えを反映していて面白い。ゲームの方もそうした原作の書き口をきちんと踏まえていたのだな、と翻訳文を通しても感じさせられた(ゲームのバイアスがかかった読み方をしてるから余計にそう感じるんだろう)。

 今からでも翻訳再開してくれたりしないだろうか。当然短編集も含めて。ゲームのウィッチャー3は読み物としての側面も強かったし、今ゲームに合わせた表紙でリリースし直したら、ゲームの国内販売数の半分くらいは売れると思うんですが(当然根拠はない)。どうでしょうか。

 

 

今日は以上。