ヨコズキゲーム’

ゲームの事しか書いてない らじてんのブログ。

「Witness」感想

 全然更新する暇がなく、色々ありました。俺です。

 

 色々あったことは放っておいて、クリアしてから随分経過してしまった「Witness」の感想。

 先に書きますと、傑作です。

 パズルで、ゲームで、こんな体験ができて、こんな体験を提供できる人間がいるとは。

 この感想、前半はネタバレなし、後半はガチガチにネタバレで、ほぼネタバレのことしか書いてません(なので折りたたんでおります)。

 どうせならプレイするなら、ネタバレを一切経ることなくプレイして欲しい一品。

 

 

クリア状況

 ゲームをクリアし、チャレンジもクリア。最後に記録している数字は520+134+5だが、黒い棒はすべて終わらせたのでもうちょい自力で解いたはず。沈没船のパズルだけ攻略を見た。悔しい。

 

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シンプルで絶妙な構成のパズル

 「Witness」は一つの島を舞台に、パズルを解くゲーム。パズルは様々なものが登場するが、基本的なルールはたった一つ。〇からUに一筆書きの要領で線を引く。ただそれだけ。

 プレイしてほどなく自由に散策できる島には、大量のパズルが用意されている。

 パズルは、ごく単純かつ簡単なものからスタートし、徐々に難しくなっていく。時には紙に書いてシミュレートする必要も出てくる。書き止めておかないと解けないパズルも登場する。紙に書きながらパズルの正解に到達していく味わいはたまらないものがある。

 そして、徐々に難易度が上がる中、プレイヤーの学習を裏切るかのように突然難易度がジャンプする。これまで把握したルールが通用しない。しかし、それは難易度設定ミスやバランス調整がいい加減なのではない。別にそのパズルをすぐにその場で解く必要はないのだ。パズルを把握するためのヒント、パズルのルールを理解するための手がかりはパズルという形で島中に散りばめられている。

 パズルに詰まって「わっかんねえよ…なんだこれ!」となって放り出して歩き出す。シンプルなデザインながら景観の変化に富んだ島は、歩いているだけでも楽しい。あ、でも視界はオプションから速攻で最大にしておかないと結構酔います。3D酔いとかひっさりぶりにした。

 テキトーにさまよっても新しいパズルを発見できる。人はパズルを提示されるとなんとなく解き始めてしまう生き物だ。基本ルールがシンプル、かつ、大体1パネルで完結するせいで、集中しやすく、まずは飛びついて解こうとしてしまう。全く意味不明でどう線を引けばいいのか皆目わからないパズルもたくさん出てくる。でも、諦めなくていい。パズルのルールを把握するためのパズルは別のパズルに存在する。いつかあっさり解けて理解出来てしまうパズルが登場するはずだ。それが、そのプレイヤーにとって一番把握しやすいパズルだったということ。そのパズルを起点にしてたくさんのパズルがクリア出来るだろうし、また詰まっても別の場所でまた閃き、いつかほとんどのパズルが解けるようになるはずだ。自分がそうだった。

 この、パズル同士が相互に「ルールの把握」を補完する配置と構成から想像するに、おそらく、プレイヤーによって詰まる場所も正解を閃く瞬間も違うのだろう。このゲームには語られるストーリーは一切ないが、体験という物語はプレイヤーの数だけある。正解は一つだけのパズルの集合体というだけなのに、ルール作りとルールを把握させる方法を飛び切り徹底した周到さ配置することで、結果的にプレイヤーごとに全く違う(であろう)体験を提供しているであろう(と思わされる)ことには脱帽するしかない。

 

 

パズル自体の豊富さたるや

 パズルの配置によって、島という舞台での自由な散策、オープンワールドな構成に意味を持たせてしまっていることにも驚嘆するのだが、いや、そもそもパズル種類の豊かさにも唖然とさせられる。

 パズルの内容を説明してしまうとそのままルール説明やヒントになってしまうものが多いので具体的には書かないが、とにかく、プレイしてもプレイしても、驚くようなルールのパズルが登場してくる。手軽なものから、大掛かりなものまで「〇からUへ線を引く一筆書きパズル」のパターンを未来永劫網羅したんじゃないのか?と訳の分からないことを思うくらい、とにかく色々登場する。基本ルールを崩さずによくもまぁこんな大量に、しかし、プレイしていくと結局なんとか解けちゃうレベルのパズルを用意しやがったなと。

 

 

冗長さすらも計算なのではと疑ってしまう

 長く島を散策し、無数のパズルの前でうなって考えていると、制作者のあまりの知性の前に、あらゆることを疑い始めるようになってくる。

 今俺はこのパズルのルールを把握したと思ったが本当に正確に把握できているのか?は当然として、同じようなパズルをちょっと冗長なほど何個もクリアさせられてるけど、これによって逆に固定観念を植え付けられているのでは?とか、このクリアしたパネルの数に何か意味があるのでは?とか。

 だって意味なさそうな事がないんです。きっとこのゲームは恐ろしく何度も思考と試行を繰り返して入念に作られていったんだって、ゲームがビシビシ伝えてくるんです。

 こんなゲームなかなかない。

 

 そして、プレイしていると突然気づく。 そこからこのゲームはただのパズルゲームではなくなる(かもしれない)。

 

 自分は「Witness」をプレイするまでほとんど前評判を知らなかった。

 おかげで、このゲームのネタバレに触れることも全くなかった。steamでリリースされて1年以上。PS4でのリリースからも半年近く。評判を聞くこともなかったが、ネタバレを食らうこともなかったことを本当に感謝している。

 なので、ここから先、プレイしてない人は出来れば読まないでいてくれると嬉しい。

 

 

 

 

ここからはネタバレ

 ここから先はネタバレ全開で書きます。

 自分の場合、沈没船をうろついている時に気づいた。沈没船のパネルが取っ掛かりすらわからず、船全体に何らかのヒントがあるんではないか?とウロウロして何も見つけられず、途方に暮れてした時だった。

 「なんだこの紐…めっちゃ引けそう」

 なんとなく線を引いたら…引けた。正直、イースターエッグの類を見つけてしまったんだと思った。ビックリしたけどそれだけだった。

 その後、別のサイン…と呼んでるんだが、サインを見つけた時に、遅れて把握したと同時に、静かに確実に驚いていくという、珍しい感覚に満たされた。その後、何かあると思った場所や形、物に次々サインを発見するうちに、驚きはどんどんと増していった。ひょっとして、この島、なんでもないものなんてないんじゃないか?

 シンプルな島の美術は、自然と物の形を象徴的に見てサインを見つけやすくするため。なんでもない場所はサインを隠し、何かありそうな作為的な形には大抵サインが隠されている。

 そのうち、疑念を以て正しく観察すれば島は応えてくれると感じるようになる。

 意味不明でなんか偉人の名言っぽいものが吹き込まれたボイスレコーダーも徐々になんとなく意するところがわかるようになってくる。これ、言ってる人も内容も違うけれど、要約すればどれもこれも、自らで規定した盲を開けと言っているのではないか。

 思えば、サインも、パズルもどれもこれも自分で思い込み囚われることで見つけられなかったり、ルールを見出せなかったりしたのではないか。答えは最初からそこに転がっていたのではないか。

 

 気分はもう、ジョジョ第6部:スティール・ボール・ランだ。鉄球に黄金の回転を与えるため、自然の中から黄金比を見つけるが如く、島を散策しサインを探す。疲れたらパネルのパズルに挑戦する。詰まっても、詰まっても、いつかはクリアできるという確信が、プレイを重ねて進むほど深まっていく。何故なら、これまでもパズルは解けて来たからだ。何故なら、このゲームの制作者の途方もない脳髄は、必ず俺にパズルが解けるだけのヒントをすでに提示しているはずだからだ。パズルをプレイしサインを探すうち、自分はゲームの制作者ジョナサン・ブローに対して信頼を寄せるまでになっていた。

 

 

現実に線を探す

 パズルをクリアする数が400~500を超える終盤に至ると、ゲームをプレイしていない時でも、Witnessのことを考え始めた。解けていないパズル、繋がりそうで繋がらないサイン。何か見落としているはず。パズルのルールを見落とす、正解に辿り着けない何らかのバインドがかかっている。そのバインドはWitnessがかけた物なのか、それとも、自分がこれまで生きた過程で培ってしまったのかなどと考える。いや、むしろ解脱して一旦頭を空っぽにした方が…云々。

 並行して、日常でもパズルを探し始めた。棚に空いた穴を見て線を引く先を探す。線を引けそうな物を見てスタート地点の〇を探す。

 さらに、Witness内でパズルを解くと見れる動画の事も悶々と考える。自己啓発なセミナーや難解な映画…しかしこのゲームは意味のない要素を入れこまないだろうと思えてしまう。日常、自分を規定し思い込むことで、色んな事を見落としたり、自分の考えを自分で縛ってしまっているのではないか??

 もうこういう事全部がWitnessによるバインドに他ならないわけだ。

 正直、一つのゲームでこんなに頭使ったのってバイオショックインフィニット以来じゃないかな。

 

 

 そして全部を無に帰す

 こうして、Witnessというゲームの沼にズブッズブにはまったところで、最後に見つけたサインから入れた隠し部屋の先に至り、盛大にぶち抜かれた。

 ついに太陽を使ったサインを解いた!!と感動していたら予想外の通路が現れ度肝を抜かれた。

 進んだ先には、これまで散々サインを解き、島を歩きまわったプレイヤーを慰撫するかのようなリゾートなホテルと島を俯瞰させる窓の外の景色。まるで開発陣がもうパズルを解かなくていいんだよと言っているようだ。ボイスレコーダーからは、スタッフロール替わりの自己紹介*1

 そして、ホテルの奥で見た光景に困惑しながら進むと、滑らかに最後の動画が始まる。

 立ち上がった開発者=プレイヤーなのだろうか。電極をつけているところから察するに、何かの実験だったのか?電極を通してプログラムが見せた世界だか、夢の中だかでパズルを解き続けた彼は、あまりに長くパズルを解いていたため、現実の中にもサインがあるのではないかと思うまでになっているようだ。〇型のものを見つけては指を這わせ、触れたり弾いてみたりする。線をなぞったり、音を鳴らしてみたりしながら外に出るが…そこに広がっていたのは、ただあるがままの世界。〇が光って線を描くこともない世界で、彼はもう一度横たわり空を眺める。ここで動画は終わる。

 この動画を見て自分は笑ってしまった。自分がゲームをプレイしてなぞった気分と同じだったからだ。ゲームをプレイするうちに、外の世界にもゲームのルールを当てはめ始める。でも、当然世界にある〇は光ったりしないし、線が引けたりもしない。こうなると、ゲーム本編にBGMがなかったことも、現実と重ね合わせさせる誘導だったのか?と疑いたくなる。だとしたらバッチリハマったわ。

 サインを見つけた当初、シャマランの映画「サイン」を想起したことを思い出す。なんでもないところにサイン(予兆?)を見つけてしまう男。映画サインの主役は、サインが伝える異変によって結果、クソザコ宇宙人から雑に世界を救ってしまうわけだが…あの映画は個人的に「絵空事だから辻褄が存在する」ということをメタクソに皮肉っていたように感じている。

 そのせいか、Witnessも同じことを体感させているのではと感じた。島が応えてくれたのは、プログラムだったからだ。そのように作られたからだ。何度も何度も、ゲームの中で盲を開かせてパズルを解かせながら、同時にバインドを仕掛けつつ、最後には「そんなのないよね!」と解き放ってしまう。ゲームプレイはそのものは、ただただパズルと解いていただけなのに、なんという語りと解放。

 

 でも、動画の最後、どうして彼は”あからさまなサインをなぞろうとしなかったんだろうか”という疑問が残った。彼があそこでなぞっていたら…一体その時このゲームはどういうメッセージを発していたんだろう。真逆の結論にもなりえたんじゃないか?いやいや…置き土産みたいな呪いを残しおって…一筋縄では行かさないゲームだなほんと。

 最後の映像のみですべてが否定されるわけではない。見方が囚われる事で簡単なそこにある事実を見落としてしまうことはよくあるし、疑いを以て観察をし直し、予断なく物事を思考する事は大事だろう。でも、解けばすぐに応えてくれるシンプルなパズルの世界はゲームの世界にしかない。いや、だからこそ、このゲームは素晴らしい。

 

 単純なパズルゲームとしても、2重3重の仕掛けを含む多数のパズルとその物量が圧巻。サインやメッセージゲームにも似た映像の意味するところを考えるのも楽しく、パズルの体験による差はそのままその人の体験=物語の差となる。

 いや、破格の体験、内容でした。

 

 ネタバレ満載の感想を書いておいてなんですが、本当にネタバレ読まずにプレイ出来たよかった。

 

 

 

今日は以上。

 

 

*1: と言うか、スタッフロールが完全にインゲームの要素になってるゲームって珍しいな…。いや最近だとニーアがあったけどアレは一応普通のスタッフロールも兼ねているしな