ヨコズキゲーム’

ゲームの事しか書いてない らじてんのブログ。

「VA-11Hall-A」感想

 皆さんsteamのオータムセール、買いましたか?

 俺は買おうと思ったやつは全部ライブラリにありました。

 

 「真・女神転生ディープストレンジジャーニー」をクリアしたので、日本語化がついに来ていたタイトルを片っ端からプレイ中。

 中でもVA-11Hall-Aが素晴らしかったので今日はその感想を。

 

 致命的なネタバレは避けた、つもり。

 でもここでこのテキストを読むつもりなぐらいならとっとと遊んでしまった方がいいと思う。

 

 

プレイ状況

 PC版でプレイ。

 クリアまで20時間程度(起動したまま寝たりしたので正直不明)

 通常のエンドと個別2種まで自力。あとは周回が辛くてスポイラーを解禁。

 トロフィーは1つを除いて取得。

 

 

サイバーパンクバーテンダーアクション?

www.youtube.com

store.steampowered.com

 まず「SukebanGames」という制作チーム名だけで素晴らしいわけだが前も同じこと言ってる)。

 先に言ってしまうと、steamページのタイトルにあるサイバーパンクバーテンダーアクション」というジャンル名?は多分ジョーク。

 ゲーム内容にアクションゲーム的な要素は全くない(オマケのミニゲームにしてもアクションじゃなくシューティングだ)。本ゲームは、バーに訪れるお客にバーテンダーとしてカクテルを作り、提供するゲーム。カクテル作成は、会話選択肢を一見曖昧に見せているだけのもので、操作は簡単、カンペを見ることが出来て、しかも制限時間すらない。

 つまり、アクションゲームが苦手な人でも、カクテルとかお酒が全く分からなくても、なんの問題もなく、サイバーパンク世界のバーテンダーとして働くことが出来る。大安心。

 

 

近未来のバーでお客の人生を想像する

 基本的には「カクテルを注ぎ、会話する」の繰り返しでゲームは進む。

 この「会話」がとにかく良い。

 腐敗した支配層によって仕切られる未来都市グリッチシティのスラム街にあるバー「VA-11Hall-A(ヴァルハラ)」には、雑多な人間が訪れる。

 ハッカー、女医、アンドロイド、上流階級猫娘、体育会系少女、幼娼婦、メカニック、24時間実況配信娘、賞金稼ぎ、アイドル、ポエマー、金田、犬、犬、犬…。サイバーパンクな舞台を活かした、奇妙な設定を背負ったキャラクターから、平凡とも言えそうなキャラまで、縦横無尽な設定のキャラがずんどこ登場してくれる。

 お客たちとの会話も縦横無尽。穏やかな時もあれば、とりとめなく騒がしい時もある。世界観自体はブレードランナー的な近未来設定だが、登場人物たちに悲愴で暗い様子はほとんど感じられない。陰気臭いキャラクターすらもコミカルなテイストが勝ち、せいぜい偏屈という程度に収まっている。重い現実に潰されないたくましさがあるのか、それともバーという非現実で出会うからなのか…などと想像するのも楽しい*1

 他愛のない日常の感想、恋愛について、価値観について、仕事の哲学、政治への不満、猥談、ゴシップ……。会話は連鎖し、入れ替わり、具体的に語られたり、抽象的に語られたり目まぐるしいがキャラクターと強固に結びついていてとっ散らかった印象なまるでない。理知的な会話もあれば、酒の席特有のカバーを取っ払ったかのような物言いも頻出する。カクテルを飲む間だけの会話は、スマホのニュースを通して見えるグリッチシティーの手触りを想像させ、同時に、キャラ同士の繋がりを垣間見せる。気付けば、それぞれの登場人物の「バーにいない時の日常」を想像させられてしまった。

 また、Vitaでもリリース出来た事が信じられないほど性的な会話やジョークが多いが、これがむしろ心地よかったりする(元々嫌いではないが)。羞恥の裏返しではしゃぐ、下心とワンセットにする、下ネタを聞いた方が照れる……というような描写がないこと大きいかも。主人公のジルからして、基本は同性愛者でありながら、男性とベッドインしようとした過去があるなど、多様な性が当たり前な点もいい。まぁ、自立人型AIがいたり、遺伝子改良人間がいたりする世界で性別など最早大したことじゃないんだろうな。

 ベティとディールの関係性の描き方はとても好み。恋愛とも友情とも断定しない関係性の描き方がよかった。

 そういや露骨なセクハラを受けるのはギルが目立ってたな。ドノヴァンのセクハラは女性側のリアクションがハッキリ描かれないし、結構配慮してるのかしらん。

 

 

ものすごいことは起こらない

 ゲームの中心は「お客との会話」でそれは最後まで変わらない。

 ゲームの中盤手前ぐらいで、グリッチシティを揺るがす大事件が起こるが、それはあくまでバーの外で起こった大事件でしかない。ゲーム内の非日常空間であるバーにも影響は出るが、直接的な何かと言えば、従業員であるジルが自宅に帰れなかったとかその程度で。事件そのものが話の中心になる事は一切ない。

 話の中心となるのはそりゃ勿論、主人公であるジルだ。しかし、そこには巨大な陰謀やとんでもない真実とかサスペンスな展開は待っていない。サイバーパンクじゃない現代を生きる自分たちでも違わない、普遍的なことが中心になる。世俗的で平凡ですらあるドラマは「サイバーパンクで」「バーで」「非日常な世界観や飛ばしたキャラクター達に囲まれている」が故に、世界が変わっても、別の国でも、大きな事件が起こっていても、同じような事で悩むし、悩んでよくて、生きることに理由はなくても生きていいし、素敵なことも起こると思わせてくれた。

 ジル以外については、ゲームは色んな断片を提示しながらも、色々と明かさずに終了する。普通ならモヤモヤしそうなものだが、むしろ清々しい納得感すらあった。描かれない情報が多いから、いっそ「伏せられているからこそ意味のある情報」という風に受け取れたし、バーテンダーは客の日常に立ち入るものではなく、そこはただ想像するしかないのだろうと思える。個別ENDを見ると、カウンターから出ている時にジルは色々知ったのかもな、と想像するのも楽しい。

 ところで、第四の壁を超えるの流行り過ぎだろ。

 

 

作業ですら楽しく感じられた

 カクテル作成はゲームプレイとしては本当に作業でしかないが、キャラクター達の人生に、ジルを通して寄り添っている、と感じるための操作として、テキスト選択肢を選ぶより有効に働いている。

 テキストを楽しみ、キャラクターを楽しみ、彼らの日常を想像し、直接見えない日常を含んだグリッチシティ=世界を想像する。そうした下敷きがあって、オーダーを通してキャラクターのイメージを膨らませながら、会話を駆動する燃料としてのカクテルを作るのは作業なれど楽しい。キー操作ではなく、あえてマウス操作で各リキュール(?)をぶち込んでいくことを選んだのも、自分にとっては自然な流れだった。

 勿論、テキストが素晴らしい仕上がりだったことが大きいが、ゲームプレイとしては最低限、しかし最適な一要素であるカクテル作成によって、「VA-11Hall-A」は見事にゲームでしか味わえないものに仕上がっていると思う。

 

 

少しの難点と感謝

 少しだけ難点も書いておこう。

 ほぼ唯一辛かったのは、セーブポイントが少ない点と、個別エンド達成条件がいまいちわからないせいで、周回プレイが結構辛いこと。スキップはめちゃ早で素晴らしい。しかし、通常プレイでは問題ないカクテル作成が周回プレイでは作業感が強まってしまい正直辛かった。3周目で根を上げスポイラー解禁したからいいっちゃいいんだが。

 で、そのくらいしか不満がない。

 

 テキスト表示速度もテンポいいし、音楽もいい。表情パターンも豊富。

 最初にこのゲームを知った時はもっと分岐があると期待してた。その期待は叶わなかったんだけど、そんなことはどうでもいいくらいのテキストだった。ローカライズしてくれたPLAYSMと訳者:武藤陽生氏に感謝を。

 何より作ってくれたスケバン、ありがとう。次回作も楽しみにしております。

 

 

 

今日は以上。

*1: 特にコミカルを一番引き受けているドロシーなどは、「ダウンロード 南無阿弥陀仏は…」とか「プロジェクトA子」を連想させられる