ヨコズキゲーム’

ゲームの事しか書いてない らじてんのブログ。

「Return of the Obra Dinn」感想

 オブラディン号こと「Return of the Obra Dinn」をクリアしたので、その感想。

 

プレイ状況

 全乗員の安否を完全に確認してフィニッシュ。

 プレイ時間は12時間くらい。

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 全編モノトーンで表現された3D空間。プレイヤーは保険調査員として、事故に遭った船「オブラ・ディン号」で何が起こったかを調査する。超常が支配する独特な雰囲気の中、論理的に、時に直観とシステムを利用して、真相を解き明かさなければならない(それが仕事なので)。

 独裁国家の入国審査官として、偽造パスポートとチェック用書類の数々と戦う「Papers, Please」から一転、全く雰囲気が違うグラフィック。どういう仕上がりになるのか…と気になっていたが、なるほど「Papers, Please」と同じ作者の作品だなぁ、と思わされるゲームだった。

 

 

死体数珠繋ぎ

 誰もいなくなった船に乗り込むプレイヤーは、保険調査員として科学的な捜査は一切行わない(マジで一切)。プレイヤーが使うのは2つのアイテム。1つは、死の瞬間を再現できる懐中時計。もう1つは、船で起こった惨事を全て書き留めることができる手帳。船で起こった出来事の結果、生き残った1人からこの2つのアイテムを受け取ったことで、プレイヤーの仕事が始まる。

 船上に残された死体の前で懐中時計を使用することで、その人物の死の瞬間を幻視することができる。まずは死の直前の音が聞こえて来る(環境音や会話など)。これが、非常に生々しく聴き応えがある。その後、死の瞬間が周辺の状況ごと目の前に現れる。直前の音が生々しいせいで、その後の死の状況も劇的で強烈に感じられるようになっている。

 幻視は「行動範囲」「ゲーム目的」の2つを同時に拡張していくものになっており、プレイヤーは時間停止空間を自由に歩きまわり観察できる。この時、死の瞬間の世界で開いていた扉などは、実際の世界でも開放された形になる(行動範囲の拡張)。そして、これが、ややこしくて面白いところだが、もし、その幻視内に別の死体があった場合、その死体を残留思念として探知可能になり、残留思念からも死の瞬間を探知できるようになる(目的の拡張)。

 最初は、ごく数人の白骨死体しか確認できないが、死の瞬間を見て、さらにその中で別の死体を探知し……ということを繰り返すうちに、船上で行ける場所が増え、新たな死体(or残留思念)が見つかって、どんどんと船での惨事が明らかになってくる。

 この死体数珠繋ぎ、めっちゃ楽しいけどめっちゃ疲れる。衝撃的なシーンから衝撃的なシーンへ。通常の船上は、静かで、波に軋む船体の音ぐらいしかしない分、死の瞬間を覗いた際はのギャップは大きい。「負の劇空間」がかなりのアタック感で迫ってくる。行けども行けども死。しかし、面白い。やめられない。何が起こったのか。気になって死から死を手繰ってどんどん遡っていってしまう。

 

 

「行間を読む」ゲームプレイ

 プレイヤーが解決しなければならないのは、全乗員の安否確認。

 そのために、死体を発見した場合は、その人物が「誰」で「死因は何か」を突き止める必要があるのだが、明確なヒントはほぼないと言っていい。例えば、幻視内音声で「船長!」と呼ぶセリフがあったとしても、あくまで聴けるのは「音」だけだ(音が再生されている間、画面は暗転しており字幕だけが表示される)。船長と呼ばれたのが一体、誰なのかは、幻視した状況から推理する必要が出てくる。本ゲームの謎解きは一事が万事その調子で、すぐ答えが解るのは死因くらいしかない。

 よく「行間を読む」と言うが、まさに本作は全編「行間を読み続ける」必要がある。ただし、読み取るのは作者の真意ではなく「一体、何が起こったか」なんだけど。

  「死の瞬間」から「死の瞬間」までの過程は最後まで明らかになることなく、行間=物語は最後までプレイヤーの頭の中にしかない。行間を想像させる情報の量が少な過ぎると訳がわからないし、多過ぎると推理が簡単になり過ぎる。情報量はギリギリのラインに抑制されており、匙加減は見事の一言。

 推理を補助するためのゲーム内機能は最低限しか用意されていない。そのため、幻視中の気になるポイントなどは、メモを取ったり、スクリーンショットを撮るなり、ゲーム外で工夫する必要がある。記憶力が良ければなしでも解ける…かもしれないが、乗員は60人もいるので大抵の人は厳しいだろう。

 「Papers, Please」も、パスポートや大量の書類を媒介に、間接的な謎解きが連続する内容だったが、それをより具体的なシステムに落とし込んだ、という印象を持った。雑な連想、結びつけという気もするけど、思っちゃったんだから仕方ない。

 

 

白黒である意味とBGM

 3Dなのに、モノトーンかつ古いMac風のグラフィックは、それだけで独特の雰囲気を醸し出しており、魅力的。このグラフィックは、人物特定の難易度を適正に上げるという効果も生んでいる。これが普通のカラー・高解像度の作品だったら、有色人種の特定が楽勝過ぎて、歯ごたえのないものになっていただろう。

 「幻視時の音が聴きごたえがある」と書いたが、サウンドは全体的に印象的。音楽のテンポに合わせて映像が展開したり、あるいは逆に音楽に合わせて映像が展開したり。残留思念を追跡する過程はちょっと面倒くさいのだが(特に無駄に回り道させられる時は)、音とゲームプレイが一致する快感がある。

 

 

ちょっとズルできる&不便な幻視システム

 本作は「推理アドベンチャー」だが、システムを利用して「ズル」も出来るようになっている(おそらく作者の想定内でズルというのは大袈裟だが)。

 というのも、答え合わせが3人ごとになっているため、2人を自力で当てたあとの、3人目は総当たりが可能なのだ。逆に、答え合わせが始まらないなら不正解が混じっているということ(これは普通にヒントの1つではある)。ぶっちゃけ、これの御陰で「ちょっと自信のない半ば当てずっぽう」がうまくはまって死因が解けた人物もいたので「アンフェアじゃー!!」と叫ぶ程ではないのだけれど、すこーしモヤモヤしたのは事実。

 また、幻視システムは、死体(or残留思念)の場所に行かねば、幻視することができないのも、徐々に不便を感じるようになる。幻視内から脱出するには、幻視内に存在する扉をいちいちくぐらないといけないのも少々面倒だ。操作や映像のテンポの作りこみから想像するに、ゲーム全体のトーンを慎重にコントロールした結果だと思うが、後半、推理が煮詰まって来た時はいちいち各死体を歩いて回るのが少し面倒で、ショートカットさせて欲しいと感じた。

 

 

二転三転する印象

 ゲームスタート直後は「船内で反乱でもあって殺し合いがあったんだな」という直球な想像(というより素直な受け取り)からプレイを始めるのだが、死を遡り、調査が進むにつれて、想像の斜め上の事態が展開する。合わせて、登場人物たちへの印象もどんどん変わる。

  正直、終盤の絵解きは結構地味だったが、表面上見えていた人々への印象が最後の瞬間まで塗り替わっていったのは見事。あとこれ…ほぼXファイルですよね。

 

 

推理物や伝奇物が好きな人はどうでしょうか

 本作の推理難易度は結構高いと思われる。見落としや、閃きのタイミング次第で、幻視出来る数は進んでも、全く人物特定が進まず、死体ばかりが増えていったりする。把握量を超えてしまい、めげてしまう人がいるやも知れない。数か所「ズルいだろそれは!」と声に出したところもあった(船外にアレしてた人とか、外側通路の人とか)。

 しかし、本作だけの独特な雰囲気は、他では得難い。観察を重ね、メモを取り、正答を導いた時に感じる「自分で解いた!」という手応えはこれ以上なく確かだ。9人くらいドバっと確定出来た時は、めちゃくちゃ気持ちよかった。

 適度な長さで、推理と怪奇を堪能させてもらい、充実した時間だった。先にも書いたように、欠点もあるし、ある程度プレイヤーに投げている分、謎解きのバランスもいい悪いは個人によって感じ方に差が出るだろう。しかし、全体を通して、常に堂々とした佇まいが、多少の欠陥も想定内に、この優美な世界に作り上げられたと感じさせるのだ。

 

 

 

今日は以上。